一括投資シミュレーションは、まとまったお金を投資信託などで一度に入れて持ち続けた場合に、何年後にいくらになるかを、過去のデータで確かめる計算です。ここからは、一度に入れるか分けて入れるかの考え方、高値や暴落への向き合い方、NISAで入れるときの決まりを説明します。
一括投資と積立(分けて入れる)、どっちが有利?
一括投資とは、手元にあるまとまったお金を、一度にまとめて投資することです。ここでいう「積立(分けて入れる)」は、手元にあるまとまったお金を、何か月かに分けて入れることです。毎月の給料から何年も積み立てる方法とは違います。
過去のデータでは、米国株と先進国株では、一度に入れたほうが多くなった回のほうが多くありました。日本株(1990年7月以降)は49%で、ほぼ半々でした。このページの計算で、先進国株に入れて10年持った場合、1年に分けて入れた場合と比べて一度に入れたほうが多かったのは64%でした(始めた月を1か月ずつずらした315回のうち203回)。
米国株・先進国株については、海外と国内の研究も同じ向きです(比べ方が違うため、数字はこのページと一致しません)。
- 米国の運用会社バンガードの研究(2023年)では、先進国の株式(1976〜2022年)で一度に入れた場合と3か月に分けた場合の1年後を比べると、一度に入れたほうが多かったのは68%でした。分けている間のお金に短期国債(満期が1年以内の国債)並みの利息を付けても65%です。
- ニッセイ基礎研究所が、毎年12万円を1月に一度に入れる場合と毎月1万円ずつ入れる場合を比べると(2000〜2023年、円に直した値・配当込み)、一度に入れたほうが多かった年は全世界株で88%、米国株(S&P500)で92%、日本株(TOPIX)で79%でした(1年の間に入れる時期を比べたもので、このページの10年の比べ方とは違います)。
理由は、株の平均的な増え方が、預金の利息より大きかったためです。分けて入れると、まだ入れていないお金には、その間、預金の利息しか付きません。
ただし、バンガードの研究で1年後の悪いほうの結果を比べると、分けたほうが上回りました(元本を100とすると、悪いほうから5%の結果は、一度に入れた場合が約83、分けた場合が約86)。このページの計算(先進国株・10年)では、10年後の悪いほうから5%の例(964万円と954万円)も、1年後に元本を下回っていた割合(34%と33%)も、分けて入れてもほとんど変わりませんでした。違いが出るのは、入れた直後の減り方です。リーマン・ショックの前に始めた場合、いちばん少ないときは、一度に入れると406万円、1年に分けると470万円でした。入れた直後の下げで売ってしまいそうな人には、分けて入れる理由があります。
何か月に分けて入れるのがいい?(ドルコスト平均法)
毎月など決まった間隔で、同じ額ずつ分けて買う方法は「ドルコスト平均法」と呼ばれます。このページの「分けて入れる」も、この方法で計算しています。
米国株や先進国株では、分ける期間を長くするほど、一度に入れた場合より少なくなりがちです。入れるのが遅れるお金が増えるためです。
このページの計算(先進国株・10年)で、分ける期間ごとに一度に入れたほうが多かった割合は、3か月で60%、6か月で63%、1年で64%、2年で66%、3年で69%、5年で72%でした。バンガードの研究(2012年、株60%・債券40%、10年保有)でも同じ傾向です。12か月に分けた場合、一度に入れたほうが多かったのは米国・英国で67%でした。米国で36か月に分けた場合は、約9割でした。
下がるのがどうしても不安なら、分けるのは3〜6か月の短い期間にとどめる、という考え方があります(バンガード 2023年)。上の計算で「分けて入れる期間」を変えると、ご自身の金額で確かめられます。
「今は高値」でも一度に入れていい?
いつが買い時かは、前もって分かりません。株価が過去の最高値を更新したときは、「高すぎるのでは」と感じやすい時期です。
過去の最高値を更新した月に始めた場合だけを取り出すと(先進国株・10年、55回)、1年に分けて入れた場合より一度に入れたほうが多かったのは78%、10年後の真ん中の例は2,105万円(元本1,000万円)でした。すべての回(64%、2,133万円)と比べて、一度に入れたほうが多かった割合は下がらず、10年後の金額もほぼ同じでした(55回は期間が大部分重なっているため、差を大きく見すぎないでください)。ここでの最高値は、配当込み・円で見た水準です。
理由は、株価が長い目で見ると上がってきたためです。最高値を更新した後も、さらに上がった時期のほうが多くありました。ただし、これは過去の話で、これからも同じとは限りません。
下がるのを待つ間(いわゆる暴落待ち)に上がり続けると、待った分だけ高い値段で入れることになります。「いつ入れるか」より、「どこまで下がっても持ち続けられる額か」のほうが、自分で決めやすい問いです。
入れた直後に暴落したら?いくら減って、何か月で戻ったか
たとえば、2007年10月(リーマン・ショックの前)に、先進国株へ1,000万円を一度に入れた場合、いちばん少ないときは406万円(2009年2月)まで減り、元本に戻るまで6年2か月かかりました。1年に分けて入れた場合は、いちばん少ないときが470万円で、戻るまで5年7か月かかりました。金額を変えると、上の「入れた直後に下がった4つの時期」の表も変わります。
一度に入れて10年持っても元本を下回っていた回は、米国株で13%、先進国株で6%、日本株で35%でした(いずれも1990年7月以降に始めた場合)。持つ期間が長いほど、元本を下回る割合は小さくなる傾向があります。
- 一度に入れた場合ではなく、毎月積み立てた場合の資料ですが、金融庁の資料では、国内外の株式と債券(国債など)を5年持つと元本割れ(元本を下回ること)になることがありましたが、20年持った場合はありませんでした(1989年以降のデータ)。
- ニッセイ基礎研究所の分析では、240万円を一度に入れて10年持った場合に元本割れになったのは、全世界株で9%、米国株(S&P500)で15%、日経平均で48%でした(1989〜2024年)。
米国株・先進国株・日本株で違いはある?
同じ1990年7月以降の期間にそろえて、1,000万円を一度に入れて10年持った場合を比べました。
| 地域 | 10年後の真ん中の例 (悪いほうから5%の例) | 一度に入れたほうが 多かった割合 |
|---|---|---|
| 米国株 | 2,604万円 (824万円) | 69% |
| 先進国株 | 2,133万円 (964万円) | 64% |
| 日本株 | 1,247万円 (661万円) | 49% |
1990年7月〜2016年9月に始めた315回。分けて入れる期間は1年。信託報酬 年0.2%を差し引いた税引前の金額です。上の計算で米国株を選ぶと、1971年2月以降のデータで計算するため、この表と少し違います。
日本株は、10年持っても元本を下回っていた回が35%ありました。データの始まりが1990年7月で、バブル崩壊の後に株価が長く低迷した時期(「失われた20年」とも呼ばれます)を多く含むためです。2010年代の後半からは日本株も大きく上がっていて、どの時期に始めたかで結果は大きく違います。上の「何に入れるか」を変えると、一度にか分けてかの答えも変わります。
米国株と先進国株は、円に直した結果です。円高になると、外国の株式は円での価値が下がります。このページのデータは、1990年代や2010年代初めの円高の時期も含んでいます。
入れた直後に長く低迷した例として、ニッセイ基礎研究所は、日経平均に1989年末(バブルの頂点の直前)に一度に入れた場合、残高が元本の22.3%まで下がり、期間の97.1%で元本を下回っていたと分析しています。このページの日本株のデータは1990年7月からなので、この時期は含まれていません。
このページの地域のデータは、それぞれの地域の上場株全体を、大きな会社ほど多く持つ形(時価総額で加重)で合わせ、配当を含めたものです。
分けて入れる間のお金(待機資金)はどこに置く?
まだ入れていないお金は「待機資金」と呼ばれます。すぐ使えて、元本が減りにくい場所に置くのが一般的です。普通預金、定期預金、個人向け国債などです。
毎月決まった額を移していくなら、出し入れしやすい口座のほうが扱いやすくなります。定期預金は、満期の前に引き出すと利息が少なくなることがあります。この計算では、待機資金に「預金・国債の利回り」(税引後)をかけています。
まとまったお金を受け取ったら:入れる前に、使う時期で仕分ける
退職金や定期預金の満期などで、まとまったお金を受け取ったら、一度に入れるか分けて入れるかを考える前に、いくらを入れるかを決めます。お金を、使う時期で3つに仕分けておくと考えやすくなります。
- 数年以内に使うお金(住宅の修繕、車、家族への援助など)
- 生活費の備え(急な出費や、収入が減ったときのためのお金)
- しばらく使わないお金(投資に回すのは、ここだけ)
数年以内に使うお金は、入れた直後に下がると、戻る前に使うことになりかねません。このシミュレーションで計算するのは、3つ目のお金です。
しばらく使わないお金の中でも、株100%にするか、預金や国債と組み合わせるかで、下がったときの減り方は変わります。上の「株の割合」を変えると確かめられます。
厚生労働省の調査では、定年退職者の退職給付(退職金と企業年金)の平均は、大卒(管理・事務・技術職)で1,896万円でした(令和5年就労条件総合調査)。金融経済教育推進機構の調査では、二人以上世帯の60歳代の金融資産は、真ん中の世帯で1,400万円で、27.2%が3,000万円以上でした(2025年)。
使い始める時期が決まっている方は、取り崩しシミュレーションで、入れた後に毎月いくら使えるかを確かめられます。
NISAで一度に入れられる額は?
NISAは、運用で出た利益に税金がかからない口座の仕組みです。NISAそのものに利回りがあるわけではなく、何に入れるかで増え方が決まります。非課税なので、このページの税引前の数字が、ほぼそのまま手取りの目安になります。
NISAには枠が2つあります。まとめて買えるのは「成長投資枠」で、年240万円まで。「つみたて投資枠」(年120万円)は、毎月などの積み立てで買う枠です。生涯の枠は1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円)なので、1,800万円を入れ切るには5年分の枠が要ります。すでにつみたて投資枠で積み立てている方は、その分だけ、まとめて入れられる額が少なくなります。
1,800万円を超える分や、5年待つ間のお金は、NISA以外の口座や預金に置くことになります。NISA以外の口座で利益が出ると、売るときに20.315%の税金がかかります。NISAで持っているものを売ると、買ったときの額の分だけ、翌年から生涯の枠が空きます。
たとえば、お一人で2,000万円を、NISAを使いながら入れていく場合の、最短の入れ方の例です。
| 年 | NISAに入れる額 | NISAの外に 残る額 |
|---|---|---|
| 1年目 | 360万円 | 1,640万円 |
| 2年目 | 360万円 | 1,280万円 |
| 3年目 | 360万円 | 920万円 |
| 4年目 | 360万円 | 560万円 |
| 5年目 | 360万円 | 200万円 |
毎年、成長投資枠で240万円を入れ、つみたて投資枠で120万円を積み立てた場合。NISAの外に残る額をどうするか(預金に置くか、NISA以外の口座で株に入れるか)も、あわせて決めます。ご夫婦なら、それぞれのNISAで同じように入れられます。
よくある質問
- 積立投資と一括投資、どちらがいいですか?
- 手元にまとまったお金がある場合、過去のデータでは、米国株と先進国株では一度に入れたほうが多くなった回のほうが多くありました(先進国株・10年で、1年に分けた場合と比べて64%)。日本株は49%で、ほぼ半々でした。ただ、入れた直後に大きく下がったときは、分けたほうが途中の減り方が小さいことが多く、下がると売ってしまいそうな人には、3〜6か月の短い期間に分けて入れる方法があります。
- 米国株に100万円を一括投資したら、10年後にいくらになりますか?
- このページの米国株(米国の上場株全体・配当込み、1971年以降のデータ)で計算すると、10年後の真ん中の例は258万円、悪いほうから5%の例は89万円でした。信託報酬 年0.2%を差し引いた税引前の金額で、過去の結果です(上の地域の表は1990年7月以降にそろえたため、数字が少し違います)。
- 1,000万円を一括投資して10年ほったらかしにすると、いくらになりますか?
- 先進国株の過去のデータでは、10年後の真ん中の例は2,133万円、悪いほうから5%の例は964万円、良いほうから5%の例は4,295万円でした。上の計算で、地域や年数を変えて確かめられます。
- 1,000万円を年5%で運用すると、10年後にいくらになりますか?
- 毎年5%で増え続けると、10年後は1,629万円です(手数料を引いた後・税金を引く前の利回りとして計算)。先進国株の過去のデータでは、315回のうち75%が、これを上回りました。実際の運用は毎年同じ利回りにはならず、年によって大きく上下します。
- 20年後に、元本の何倍になりますか?
- 一度に入れて20年持った場合の真ん中の例は、米国株で元本の5.2倍、先進国株で3.7倍、日本株で1.7倍でした(信託報酬 年0.2%を差し引いた税引前。米国株は1971年以降のデータ)。始めた月を1か月ずつずらして計算したので、20年の期間は大部分が重なっています。
- 300万円をほったらかしで投資するには、どうしたらいいですか?
- まず、数年以内に使う予定のお金でないかを確かめます。300万円は、NISAなら成長投資枠の240万円と、つみたて投資枠で毎月5万円ずつ積み立てる60万円で、1年のうちに入れられる額です。何に入れるかで結果は大きく変わるので、上の「何に入れるか」を変えて確かめてください。
- 500万円を一括投資すると、10年後にいくらになりますか?
- 10年持った場合の真ん中の例は、米国株で1,302万円、先進国株で1,066万円、日本株で624万円でした(1990年7月以降)。地域によって結果は大きく違います。このページでは特定の商品は勧めていません。入れる前に、使う時期で仕分けておくことと、下がったときにどうするかを決めておくと、迷いにくくなります。
- 一括投資は、いつ入れるのがいいですか?
- いつが買い時かは、前もって分かりません。過去の最高値を更新した月に始めた場合でも、一度に入れたほうが多かったのは78%で、すべての回の64%と比べて下がりませんでした(先進国株・10年、1年に分けた場合と比較)。
- 何か月に分けて入れればいいですか?
- 毎月同じ額ずつ分けて入れる方法(ドルコスト平均法)では、米国株や先進国株の場合、長く分けるほど、一度に入れた場合より少なくなりがちです。下がるのが不安で分けるなら、3〜6か月の短い期間にとどめるという考え方があります(バンガード 2023年)。
- 一括投資の直後に暴落したら、どうなりますか?
- 2007年10月に、先進国株へ1,000万円を一度に入れた場合、いちばん少ないときは406万円まで減り、元本に戻るまで6年2か月かかりました。1年に分けて入れた場合は470万円まで減りました。持つ期間が長いほど、元本を下回る割合は小さくなる傾向があります。
- 一括投資をほったらかしにしても大丈夫ですか?
- 持つ期間が長いほど、元本を下回る割合は小さくなりました。一度に入れて10年持っても元本を下回っていた回は、米国株で13%、先進国株で6%、日本株で35%でした(いずれも1990年7月以降に始めた場合)。数年以内に使う予定のお金は、入れた直後に下がると戻る前に使うことになりかねないため、入れる対象から外しておきます。
- 分けて入れている間のお金は、どこに置けばいいですか?
- すぐ使えて元本が減りにくい場所が一般的です。普通預金、定期預金、個人向け国債などです。毎月移していくなら、出し入れしやすい口座のほうが扱いやすくなります。
- NISAで一括投資はできますか?
- できます。一度に買えるのは成長投資枠の年240万円までで、つみたて投資枠(年120万円)は積み立てで買います。生涯の枠は1,800万円なので、入れ切るには5年分の枠が要ります。
- 新NISAで1,800万円をほったらかしにすると、どうなりますか?
- NISAでは1,800万円を一度には入れられず、最短5年に分けて入れます。仮に一度に入れたとすると、先進国株の過去のデータでは20年後の真ん中の例は元本の3.7倍でした。実際は5年に分けて入れるので、多くの場合、これより少なくなります。
- 株と債券(国債)を組み合わせると、どう変わりますか?
- 株を減らすと、増え方は小さくなりますが、下がったときの減り方も小さくなります。先進国株・10年で1,000万円を一度に入れた場合、いちばん悪い時期に始めた回の、途中でいちばん少なかった額は、株100%で385万円、株50%(残りは年0.5%の預金・国債)で637万円でした。10年後の真ん中の例は、2,133万円と1,561万円です。上の「株の割合」で、ご自身の金額で確かめられます。
- 退職金は、全部入れてもいいですか?
- 先に、数年以内に使うお金と、生活費の備えを仕分けておきます。入れるのは、しばらく使わないお金だけです。そのうえで、株100%にするか、預金や国債と組み合わせるかを決めます。
- 為替(円高・円安)で、結果はどう変わりますか?
- 米国株と先進国株の結果は円に直したもので、円高の時期も含んでいます。円高になると、外国の株式は円での価値が下がり、円安になると上がります。たとえば1ドル150円から120円になると、株価が同じでも、円での価値は2割下がります。
- NISAの利回りは、どのくらいですか?
- NISA自体に利回りはありません。NISAは利益に税金がかからない口座の仕組みで、増え方は何に入れるかで決まります。このページの地域ごとの結果が、税金がかからない場合の目安です。